活断層の危険度を示す方法を「S」「A」など4段階に改める。大地震後は「余震」の表現などを見直す――。熊本地震の発生から4カ月が過ぎ、政府は地震対策の見直しを積極的に進めています。いずれも熊本地震の特徴を踏まえ、今後の地震対策に生かすための取り組みです。

 耐震基準についても、見直しの議論が進んでいます。国土交通省と建築研究所による「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」です。5月の第1回6月の第2回を経て、第3回を9月に開催する予定です。

 どのような方針が示されるか、とても注目していますが、現行の建築基準法の方針に変わりはないでしょう。建基法で示す耐震基準はあくまで「最低基準」だという点です。大地震に対しては、人命は守るけれど、建物は相応に損傷してしまいます。建て主に対して、このことをしっかり伝えたうえで、希望する耐震性能を確認することが重要です。

 本誌3月号の特集「あなたの建てどきはいつ?」で建設予定者500人にアンケートを実施しました。「どれくらいの耐震性能を望むか」という質問の回答を予算別に示しています。耐震等級2や3を選択した割合は、予算が1000万円以上だと5割を超えており、2500万円以上だと7割近くになります。この調査は、熊本地震より前に実施していますので、地震発生後はその割合がさらに高くなっていることが予想されます。

 そこで本誌は「熊本地震のような震度7の地震の後も住み続けることができる家」という高いハードルを設定。これを実現するための方法を、四つの提言にまとめました。免震技術という選択肢もありますが、ここはあえて、“耐震”にこだわりました。

特集「震度7でも住める家」
特集「震度7でも住める家」
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壁量、直下率、金物、筋かいがポイント

 四つの提言は以下の通りです。

  • 提言1壁量:余力抜きで等級3の1.39倍
  • 提言2直下率:上下の耐力壁つなげて地震力を伝達
  • 提言3金物:施工ミスと金物の選定に注意
  • 提言4筋かい:2Pをやめて面材で押さえる

 提言1の「壁量」は、「余力抜きで等級3の1.39倍」という高いレベルになってしまいました。実現できないレベルかもしれません。でも、そのくらい大きな揺れが現実に起こったことを建て主に知ってもらうことも重要だと考え、提言に加えました。実施策として、準耐力壁や外装材も耐力要素に加える場合がヒントになりそうです。

 「直下率」「金物」「筋かい」については、できるだけ実際の家づくりの場面で採用しやすいよう、具体的な内容を盛り込んでいます。耐力壁の位置、金物の取り付け方、筋かいと内装ボードの関係など、配慮が必要な点を挙げています。地震に強い家を実現するには、こうした細かな配慮の積み重ねこそ重要と考えるからです。

 日経ホームビルダーでは、8月号までの熊本地震の一連の記事と、住宅の破壊実験や筋かいの問題点などを解説した連載記事をまとめた書籍「なぜ新耐震住宅は倒れたか」を今月、発行します。耐震性能が不足した住宅がどう倒れるか、筋かいが本来の耐力を発揮できない理由などを詳しく解説しています。今後の地震対策に、役立つ一冊です。

ZEH採用した建て主に密着

 もう一つの特集は「ZEHで125万円!『補助金』獲得術」です。ZEH制度で補助金125万円を取得した建て主に密着取材しました。

 依頼を受けた設計者は、ZEH仕様の住宅を設計するとともに、ZEHビルダーの登録や補助金申請に奮闘します。基準ギリギリでは採択から漏れることもあります。仮に採択から漏れてしまうと、資金計画が変わり、建て主の信用を失ってしまうから大変です。どのようにして補助金を受けたか、本誌でご確認ください。

特集「ZEHで125万円! 『補助金』獲得術」
特集「ZEHで125万円! 『補助金』獲得術」
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日経ホームビルダー9月号の記事一覧

熊本地震が突き付けた戸建ての死角。問題がないはずの新耐震住宅が多数倒壊した。被災住宅の現地調査と図面分析から、倒壊の原因と対策を読み解く。

定価:本体2,400円+税。日経ホームビルダー(編)
A5判、約200ページ
ISBN:978-4-8222-0069-5
商品番号:255320
発行日:2016年8月29日
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熊本地震の被害から地震に強い家を再検証しました。一般的には、昭和56年(1981年)の新耐震基準より古い家が地震に弱いと考えられてきましたが、熊本地震では新耐震基準の家も2000年を境に耐震性能に違いがあることが明らかになりました。2000年の告示で追加になった規定や、くぎのめり込みによる強度の低下など、日経ホームビルダーが報じてきた耐震対策の課題を一冊にまとめました。[ 詳細・目次一覧